世界を震撼させた1stフルアルバムの衝撃
2017年10月25日、LOVEBITESが満を持して放った1stフルアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』は、日本のヘヴィメタルシーンのみならず、世界中のHR/HMファンを歓喜させた金字塔的作品だ。デビューEP『THE LOVEBITES EP』で提示したクラシカルかつアグレッシブなヘヴィメタルサウンドをさらに洗練させ、全12曲という圧巻のボリュームで自身の音楽的アイデンティティを完璧に確立した。本作よりサポートギター/キーボードであったmi-ya(現miyako)が正式加入し、5人体制の強固なバンドとして覚醒を果たしている。
サウンドプロダクションは前作に続き、フィンランドの世界的名門「フィンヴォックス・スタジオ(Finnvox Studios)」のミッコ・カルミラ(ミックス)とミカ・ユッシラ(マスタリング)が担当。欧州メタル直系の重厚で透明感あふれるサウンドへと昇華されている。ジャケットアートワークにはヘロウィン(HELLOWEEN)等の作品も手掛けるスペインのイラストレーター陣を起用し、純白の衣装を纏った美麗な5人のビジュアルと、音から放たれる本格派のヘヴィメタル精神との対比は世界中で大きな称賛を浴びた。
ここでは、公式リリースデータに基づく正確な曲順および作詞・作曲クレジットに沿って、本作『AWAKENING FROM ABYSS』の全12曲を1曲ずつ深く読み解いていく。
The Awakening
作曲:Mao / 編曲:LOVEBITES, Mao
アルバムのプロローグを飾る「The Awakening」は、1分半に及ぶシンフォニックなインストゥルメンタル・トラックだ。オーケストレーションと重厚なストリングスが静かに立ち上り、これから展開される壮大なヘヴィメタル絵巻への緊張感と期待感を極限まで高めてくれる。
暗闇から深淵(Abyss)を突き破り、光の中へと目覚めていくかのような展開美が見事だ。余韻を残したまま、間髪を入れずに次曲「The Hammer Of Wrath」の爆発的なスピードリフへと繋がっていく構成は美しく、アルバム全体のストーリー性を強固に裏付けている。
The Hammer Of Wrath
作詞:miho / 作曲:miho, Mao / 編曲:LOVEBITES, Mao
前曲の緊張感を一気に解き放つように炸裂する2曲目の「The Hammer Of Wrath」は、タイトルが示す通り「怒りの鉄槌」を撃ち下ろすかのような激しいスピード・スラッシュ・メタル・ナンバーだ。創設者であるmihoとMaoの共作によって生み出された。
イントロから打ち鳴らされる高速ツインリフとharunaの猛烈なツーバス連打は、聴き手のアドレナリンを沸騰させるのに十分な破壊力を持っている。asamiのボーカルアプローチも非常に鋭く、ハイトーンシャウトの鋭利さは圧巻の一言。疾走するリズムの上で展開されるmidoriとmi-ya(現miyako)のテクニカルなギターバトルもスリリングで、ライブでも絶大な爆発力を誇る初期のキラーチューンだ。
Warning Shot
作詞:asami / 作曲:mi-ya / 編曲:mi-ya, LOVEBITES
3曲目の「Warning Shot」は、正式メンバーとして加入したmi-ya(現miyako)が作曲を手掛け、asamiが作詞を担当したアグレッシブな正統派ヘヴィメタル・チューン。「威嚇射撃」というタイトルが示す通り、シーンに対する挑戦的な姿勢が力強く表現されている。
ザクザクと刻まれる硬質なギターリフと跳躍感のあるリズムセクションが非常に心地よく、楽曲を強力に牽引する。サビにおけるasamiの歌唱は力強さとキャッチーさが共存しており、一度聴いたら耳から離れない魅力を持っている。要所で魅せるクラシカルなツインギターのメロディと、後半に向かって熱量を上げていく展開美が見事で、mi-yaの持つ高いソングライティング能力が遺憾なく発揮されている。
Shadowmaker
作詞:asami / 作曲:mi-ya / 編曲:mi-ya, LOVEBITES
4曲目の「Shadowmaker」は、本作のリードトラックとしてMVも制作され、世界中のメタルファンに強烈なインパクトを与えたバンドの代表曲だ。作曲はmi-ya、作詞はasamiが手掛けた。
イントロのネオ・クラシカルで凶暴な超高速ツインリフが鳴り響いた瞬間、鳥肌が立つのを抑えられない。harunaの打撃力あふれるツーバスとmihoの重厚なベースが刻む怒涛のビートの上で、asamiが美しくも力強い旋律を伸びやかに歌い上げる。メロディック・スピード・メタルの醍醐味が凝縮されており、間奏部でのツインギターによる緻密なソロアプローチとキーボードのバッキングは息をのむ美しさだ。バンドのアイデンティティを世界に証明した歴史的名曲である。
Scream For Me (Awakened Version)
作詞:Dr. U / 作曲:mi-ya / 編曲:mi-ya, LOVEBITES
デビューEPに収録されていた「Scream For Me」が、アルバム用に再ミックスおよびブラッシュアップされて収録。80年代アメカジ・ハードロックやLAメタルのノリを感じさせる、キャッチーかつグラマラスなアプローチが特徴的だ。
「Shadowmaker」の圧倒的疾走感から一変、グルーヴィーなリフとノリの良さが際立っている。asamiのブルージーかつソウルフルな歌唱の表現力の幅深さに改めて驚かされる。ライブでの観客とのシンガロングを意識したサビの強烈なフックは実に魅力的で、アルバム構成において絶妙なアクセントとして機能している。
Liar
作詞:Dr. U / 作曲:mi-ya / 編曲:mi-ya, LOVEBITES
6曲目の「Liar」は、キャッチーなハードロック的アプローチと洗練されたヘヴィネスが見事に融合した楽曲だ。作詞をDr. U、作曲をmi-yaが手掛けている。
ツインギターが織りなす印象的なリフと、跳躍感のあるリズム隊のコンビネーションが実に心地よい。「嘘つき」をテーマにしたスリリングな世界観を、asamiがエモーショナルなミドルレンジからハイトーンまで自在に歌い上げる。メロディの引きの強さと骨太なバンド演奏が絶妙な均衡を保っており、mi-yaのマルチなコンポーズ能力を感じさせる佳曲だ。
Burden Of Time
作詞:miho / 作曲:miho, Mao / 編曲:Mao, LOVEBITES
7曲目の「Burden Of Time」は、正統派NWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)の血脈を感じさせる疾走リフと、哀愁を帯びたメロディが心地よい本格派ヘヴィメタル・チューン。mihoとMaoのタッグによって生み出された。
アイアン・メイデンを彷彿とさせる流麗なギターリフと、疾走するビートの組み合わせがメタルファンの琴線を直撃する。asamiのハイトーンの突き抜け感が爽快で、サビで一気に視界が開けるような叙情的な旋律が深い感動を与える。ツインギターの美しきハーモニーソロも含め、ヘヴィメタルの王道美を徹底的に突き詰めたクオリティの高さに圧倒される。
The Apocalypse (Awakened Version)
作詞:miho / 作曲:miho, Mao / 編曲:LOVEBITES, Mao
デビューEPの2曲目に置かれていたアグレッシブなファスト・ナンバーが「Awakened Version」として登場。EP版に比べて音の分離感とクリアさが格段に向上しており、低音の押し出しとエッジの効いたギターサウンドがより洗練された。
攻撃的なスラッシュメタル的リフとharunaの猛烈なドラミングが曲全体を駆動する。中間部での叙情的なアコースティックギターのニュアンスや、スリリングなギターソロ合戦は何度聴いても熱い。初期LOVEBITESが持っていた尖ったエナジーが完璧な形でパッケージングされている。
Inspire
作詞:asami / 作曲:Araken / 編曲:Araken, LOVEBITES
9曲目に配置された「Inspire」は、重厚なミドルテンポのリフとスケール感あふれるキャッチーなメロディが映えるロック・アンセム。外部コンポーザーであるArakenが作曲・編曲(バンドと共編)を手掛け、asamiが作詞を担当した。
ザクザクと刻まれる力強いギターリフと、mihoの重厚なベースラインが生み出すボトムの安定感が素晴らしい。サビにおけるasamiの歌唱は開放感に満ちあふれており、聴く者を勇気づける前向きなエネルギーに満ちている。テクニックだけに依存せず、メロディのフックと歌の表現力を前面に打ち出した楽曲であり、アルバムの終盤に向けた素晴らしい起爆剤となっている。
Don’t Bite The Dust (Awakened Version)
作詞:miho / 作曲:miho, Mao / 編曲:LOVEBITES, Mao
デビューEPのリードトラックであり、バンドの記念すべき出発点となった名曲のアルバム再録バージョン。アイアン・メイデン直系の流麗なツインギターリフと、疾走感あふれるメロディック・スピード・メタルサウンドが鮮やかに疾走する。
アルバムの終盤に配置されたことで、クライマックスに向けて怒涛の勢いを加える役割を果たしている。asamiのソウルフルな歌声とサビでの壮快なハイトーン、そしてタイトな演奏陣のアンサンブルは圧巻で、何度聴いても色褪せないタイムレスな魅力を持つアンセムだ。
Edge Of The World
作詞:asami / 作曲:Mao / 編曲:LOVEBITES, Mao
11曲目の「Edge Of The World」は、7分を超える演奏時間を誇る壮大な大曲であり、本作の最大のハイライトのひとつ。作詞をasami、作曲をMaoが手掛けたプログレッシブな雰囲気を纏った名曲だ。
静謐なアコースティックギターとasamiのエモーショナルな歌い出しから静かに始まり、徐々に重厚なヘヴィ・サウンドへと展開。テンポや展開が目まぐるしく変化し、クラシカルな叙情美からテクニカルで激しいパートへと展開していく過程は息をのむ美しさだ。midoriとmi-yaによるギターソロの掛け合いは圧巻で、1つの壮大なドラマを観終えたかのような深遠な感動と余韻を残す。
The Bravehearted (Awakened Version)
作詞:haruna, asami / 作曲:haruna / 編曲:mi-ya, LOVEBITES
1stアルバムのフィナーレを飾る「The Bravehearted (Awakened Version)」は、デビューEPでは日本語で歌われていた「Bravehearted」を全編英語詞へとリアレンジし、タイトルに「The」を冠したメロディック・スピード・メタル・ナンバー。作曲はドラマーのharunaが手掛け、作詞にはasamiも参加している。
haruna特有の琴線に触れるキャッチーで哀愁あふれるメロディラインはそのままに、英語詞となったことでスピード感とアグレッシブさが大幅に向上している。超高速ツーバスドラムと美麗なツインギターが吹き荒れる中、asamiがエモーショナルに歌い上げるラストのサビは感動的だ。壮大な1stアルバムをしめくくる最高のエンディング・トラックである。
『AWAKENING FROM ABYSS』総評
正確なクレジットとトラックリストに基づき改めて紐解くと、『AWAKENING FROM ABYSS』という作品の緻密な構造と圧倒的な完成度に改めて感服させられる。miho、mi-ya、haruna、asamiらメンバー自身のソングライティングに加え、MaoやArakenといった共作者たちの才能が見事に組み合わさり、捨て曲一切なしの名盤が完成した。正統派メタル、スラッシュメタル、メロディック・スピードメタル、そしてプログレッシブな大曲までが見事な配置で並ぶ本作は、LOVEBITESが世界最高峰のメタルバンドへと飛翔する基盤を完璧に築き上げた、永遠に色褪せない歴史的傑作である。

